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2010年01月27日

マッチ売りの少女

むかしむかし、雪の降りしきる大みそかの晩。
 みすぼらしい服をきたマッチ売りの少女が、寒さにふるえながら、一生けんめい通る人によびかけていました。

「マッチはいかが。マッチはいかがですか。だれか、マッチを買ってください」

 でも、だれも立ち止まってくれません。

「おねがい、一本でもいいんです。だれか、マッチを買ってください」

 きょうはまだ、一本も売れていません。
 場所を変えようと、少女が歩きはじめたときです。
 目の前を一台の馬車(ばしゃ)が走りぬけました。
 危ない!
 少女はあわててよけようとして、雪の上にころんでしまい、そのはずみにくつを飛ばしてしまいました。
 お母さんのお古のくつで、少女の足には大きすぎましたが、少女の持っている、たった1つのくつなのです。
 少女はあちらこちらさがしましたが、どうしても見つかりません。
 しかたなく、はだしのままで歩きだしました。
 冷たい雪の上をいくうちに、少女の足はぶどう色に変わっていきました。
 しばらくいくと、どこからか肉を焼くにおいがしてきました。

「ああ、いいにおい。・・・おなかがすいたなあー」

 でも、少女は帰ろうとしません。
 マッチが一本も売れないまま家に帰っても、お父さんはけっして家に入れてくれません。
 それどころか、

「この、やくたたずめ!」

と、ひどくぶたれるのです。
 少女は寒さをさけるために、家と家との間にはいってしゃがみこみました。
 それでもじんじんと凍えそうです。

「そうだわ、マッチをすって暖まろう」

 そういって、一本のマッチを壁にすりつけました。
 シュッ。
 マッチの火は、とてもあたたかでした。
 少女はいつのまにか、勢いよく燃えるストーブの前にすわっているような気がしました。

「なんてあたたかいんだろう。ああ、いい気持ち」

 少女がストーブに手をのばそうとしたとたん、マッチの火は消えて、ストーブもかき消すようになくなってしまいました。
 少女はまた、マッチをすってみました。
 あたりは、ぱあーっと明るくなり、光が壁をてらすと、まるでへやの中にいるような気持ちになりました。
 へやの中のテーブルには、ごちそうが並んでいます。
 ふしぎなことに、湯気をたてた、ガチョウの丸焼きが、少女のほうへ近づいてくるのです。

「うわっ、おいしそう」

 そのとき、すうっとマッチの火が消え、ごちそうもへやも、あっというまになくなってしまいました。
 少女はがっかりして、もう一度マッチをすりました。
 するとどうでしょう。
 光の中に、大きなクリスマスツリーが浮かびあがっていました。
 枝にはかぞえきれないくらい、たくさんのろうそくが輝いています。
 思わず少女が近づくと、ツリーはふわっとなくなってしまいました。
 また、マッチの火が消えたのです。
 けれども、ろうそくの光は消えずに、ゆっくりと、空高くのぼっていきました。
 そしてそれが、つぎつぎに星になったのです。
 やがてその星の一つが、長い光の尾を引いて落ちてきました。

「あっ、今、だれかが死んだんだわ」

 少女は、死んだおばあさんのことばをおぼえていました。

「星が一つ落ちるとき、一つの魂が神さまのところへのぼっていくんだよ」

 少女はやさしかったおばあさんのことを思い出しました。

「ああ、おばあさんに、あいたいなー」

 少女はまた、マッチをすりました。
 ぱあーっと、あたりが明るくなり、その光の中で大好きなおばあさんがほほえんでいました。

「おばあさん、わたしも連れてって。火が消えるといなくなるなんていやよ。わたし、どこにもいくところがないの」

 少女はそういいながら、残っているマッチを、一本、また一本と、どんどん燃やし続けました。
 おばあさんは、そっとやさしく少女を抱きあげてくれました。

「わあーっ、おばあさんのからだは、とってもあったかい」

 やがて、ふたりは光に包まれて、空高くのぼっていきました。

 新年の朝、少女はほほえみながら死んでいました。
 集まった町の人びとは、

「かわいそうに、マッチを燃やして暖まろうとしていたんだね」

と、いいました。
 少女がマッチの火でおばあさんに会い、天国へのぼったことなど、だれも知りませんでした。

おしまい
posted by kanpaku at 07:04| 海外のお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月26日

人魚姫

深い深い海の底に、サンゴの壁とコハクのまどのお城があります。
 そのお城は、人魚の王さまのお城です。
 王さまには六人の姫がいて、その中でも、とりわけ一番末の姫はきれいでした。
 その肌はバラの花びらのようにすきとおり、目は深い海のように青くすんでいます。
 人魚たちの世界では、十五歳になると海の上の人間の世界を見に行くことを許されていました。
 末っ子の姫は、お姉さんたちが見てきた人間の世界の様子を、いつも胸ときめかして聞いています。

「ああ、はやく十五歳になって、人間の世界を見てみたいわ」

 そうするうちに、一番末の姫もついに十五歳をむかえ、はれて海の上に出る日がきました。
 喜んだ姫が上へ上へとのぼっていくと、最初に目に入ったのは大きな船でした。

「わあー、すごい。人間て、こんなに大きな物を作るんだ」

 人魚姫は船を追いかけると、甲板のすき間から、そっと中をのぞいてみました。
 船の中はパーティーをしていて、にぎやかな音楽が流れるなか、美しく着かざった人たちがダンスをしています。
 その中に、ひときわ目をひく美しい少年がいました。
 それは、パーティーの主役の王子です。
 そのパーティーは、王子の十六歳の誕生日を祝う誕生パーティーだったのです。

「すてきな王子さま」

 人魚姫は夜になっても、うっとりと王子のようすを見つめていました。
と、突然、海の景色が変わりました。
 稲光が走ると風がふき、波がうねりはじめたのです。

「あらしだわ!」

  水夫たちがあわてて帆(ほ)をたたみますが、あらしはますます激しくなると、船は見るまに横倒しになってしまいました。
 船に乗っていた人びとが、荒れくるう海に放り出されます。

「大変! 王子さまー!」

 人魚姫は大急ぎで王子の姿を探しだすと、ぐったりしている王子のからだをだいて、浜辺へと運びました。

「王子さま、しっかりして。王子さま!」

 人魚姫は王子さまを、けんめいに看病しました。
 気がつくと、もう朝になっていました。
 そこへ、若い娘が走ってきます。

「あっ、いけない」

 人魚姫はビックリして、海に身をかくしました。
 すると娘は王子に気がついて、あわてて人を呼びました。
 王子はそのとき、息をふきかえしました。

「あ、ありがとう。あなたが、わたしを助けてくれたのですね」

 王子は目の前にいる娘を、命の恩人と勘違いしてしまいました。
 人魚姫はションボリして城に帰ってきましたが、どうしても王子のことが忘れられません。

「ああ、すてきな王子さま。・・・そうだ、人間になれば、王子さまにまた会えるかもしれない」

 そこで魔女(まじょ)のところへ出かけると、人間の女にしてくれるようたのみました。

 魔女は人魚姫の願いを聞くと、こう答えました。

「そうかい、そうかい。人間の王子に会うために、人間の女にねえ。なるほど。まあ、わたしの力を持ってすれば、人魚のしっぽを人間のような足にかえることは出来るよ。でもそのかわりに、足は歩くたびにナイフをふむように痛むよ。それと、もしお前が王子と結婚できなかったら、お前は二度と人魚には戻れない。いや、それどころか心臓が破れて、お前は海のあわになっちまうんだ。それでもいいんだね」

「いいわ。王子さまと、一緒にいられるのなら」

「よしよし、ああ、それから。願いをかなえるほうびに、お前の声をもらうよ。お前の声は、海の世界で一番美しいと評判だからね」

 魔女の力で人間の女になった人魚姫は、口のきけない身で人間の世界へ戻り、王子の城をたずねました。

「おお、なんと美しい娘だ」

 王子は人魚姫をひと目見て気に入り、妹のようにかわいがりました。
 しかし王子の心は、命の恩人と思いこんでいる、あの浜辺で会った娘にうばわれていたのです。
 やがて王子と娘は、結婚式をあげることになりました。
 二人は船に乗りこむと、新婚旅行に向かいます。
 王子と結婚できなかった姫は、次の日の朝、海のあわになってしまうのです。
 しかし人魚姫には、どうすることもできません。
 ただ、船の手すりにもたれているばかりでした。
 そのとき、波の上に人魚姫のお姉さんたちが姿を見せました。

「魔女から、あなたのためにナイフをもらってきたわ。これで王子の心臓(しんぞう)をさしなさい。そしてその血を足にぬるのです。そうすれば、あなたは人魚に戻れるのよ」

 人魚姫はナイフを受け取ると、王子の眠る寝室へと入っていきました。

(王子さま、さようなら、わたしは人魚にもどります)

 人魚姫は王子のひたいにお別れのキスをすると、ナイフをひといきに突き立てようとしました。

「・・・・・・」

 でも、人魚姫には、愛する王子を殺すことができません。
 人魚姫はナイフを投げ捨てると、海に身を投げました。
 波にもまれながら人魚姫は、だんだんと自分のからだがとけて、あわになっていくのがわかりました。
 そのとき、海からのぼったお日さまの光の中を、すきとおった美しいものが漂っているのが見えました。
 人魚姫も自分が空気のように軽くなり、空中にのぼっていくのに気づきました。

「わたしは、どこに行くのかしら?」

 すると、すきとおった声が答えます。

「ようこそ、空気の精の世界へ。あなたは空気の精になって、世界中の恋人たちを見守るのですよ」

 人魚姫は、自分の目から涙が一しずく落ちるのを感じながら、風ともに雲の上へとのぼっていきました。

おしまい
posted by kanpaku at 06:56| 海外のお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月15日

三匹の子ブタ

むかしむかし、あるところに、三匹の子ブタがいました。
 みんなの名まえは、一番のお兄さんが「大ブタちゃん」、二番目のお兄さんが「中ブタちゃん」、三番目の弟が「ちいブタちゃん」です。
 さて、三匹の子ブタは、それぞれ自分のお家をつくることになりました。
 大ブタちゃんは、ワラのお家をつくることにしました。
 ワラをなわでしばって、ギュッ、ギュッ、ギュッ、はい、すぐにできあがりました。
 中ブタちゃんは、木のお家をつくることにしました。
 まず柱を立てて、まわりにならべた木にクギをうって、トントントンと、はい、できあがりました。
 ちいブタちゃんは、

「ぼくのお家はワラでも木でもない、かたくてじょうぶなレンガでつくろう」

 レンガを運んで、レンガをつんで、ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ、時間はかかりましたが、ようやくできあがりました。

「ワーイ、できた、できた」

 自分たちのお家ができて、三匹の子ブタはとてもごきげんです。
 すると、山にすんでいるわるいオオカミが、ワラのお家にやってきました。

「大ブタくん、大ブタくん、ここをあけておくれ。ぼくをお家に入れとくれよ」

 大ブタちゃんは、ビックリして答えました。

「とんでもない! ぜったいにいやだよう!」

 するとオオカミは、恐ろしい声でどなりました。

「よーし、そんなら、こんな家なんか、おれさまの自慢(じまん)の息(いき)で、ふき飛ばしてやるぞ!」

 オオカミがほっペをふくらませて、フーッと息をふいたら、ワラのお家はバラバラにふき飛んでしまいました。
 そこでオオカミは、大ブタちゃんをつかまえて、ペロリと食べてしまいました。
 さて、それからオオカミは、木のお家にやってきました。

「中ブタくん、中ブタくん、ここをあけておくれ。ぼくをお家へ入れとくれよ」

 中ブタちゃんはビックリして、戸を押さえていいました。

「とんでもない! ぜったいにいやだよう!」

 するとオオカミは、恐ろしい声でどなりました。

「よーし、そんなら、こんな家なんか、おれさまの自慢のいきで、ふき飛ばしてやるぞ!」
 オオカミがフーッと息をふきましたが、木の家はなかなかこわれません。

「よし、こうなったら体当たりだ!」

 オオカミは勢いをつけると、木の家に体当たりをしました。
 ドシーン!
 木のお家は、バラバラにこわれてしまいました。
 そこでオオカミは、中ブタちゃんをペロリと食べてしまいました。
 さて、それからオオカミは、レンガのお家へやってきました。

「ちいブタくん、ちいブタくん、ここをあけておくれ。ぼくをお家に入れとくれよ」

 ちいブタちゃんもビックリして、

「とんでもない! ぜったいにいやだよう!」

 するとオオカミは、恐ろしい声でどなりました。

「よーし、そんなら、こんな家なんか、おれさまの自慢のいきで、ふき飛ばしてやるぞ!」

 オオカミが、フーッと息をふきましたが、レンガの家はビクともしません。

「よし、こうなったら、体当たりだ!」

 オオカミは勢いをつけると、レンガの家に体当たりをしました。
 ドシーン!
 でも、レンガの家はビクともしません。
 オオカミは、うなりました。

「おぼえてろ。こうなったら煙突(えんとつ)からおりてって、ちいブタのやつを食べてやるぞ!」

 それを聞いたちいブタちゃんは、大急ぎで大きなナベにお湯をわかしました。
 火をドンドン燃やしたので、お湯がグラグラとわきました。
 煙突からおりてきたオオカミは、そのお湯の中にボチャーン! と落ちました。

「あつい、あついよー! 助けてくれー!」

 泣きさけぶオオカミに、ちいブタちゃんがいいました。

「じゃあ、もう悪いことはしないか?」

「しない、しない」

「じゃあ、食べたお兄さんたちをかえすか?」

「かえす、かえす。だから助けてくれー!」

「よし、約束だぞ」

 ちいブタちゃんがオオカミをナベから出してやると、オオカミは食べた大ブタちゃんと中ブタちゃんをはき出して、泣きながら山に逃げていきました。
 助かった大ブタちゃんと中ブタちゃんは、ちいブタちゃんのレンガの家で、なかよくくらしました。

おしまい
posted by kanpaku at 20:17| 海外のお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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